一文字違いに本音が出た


私の結婚は、今から20年ほど前になります。教師をしていたので、忙しいのもあって縁遠く、見合いで結婚することになったときは29歳になっていました。その当時としては遅れ気味でしたので、正直、結婚がきまってほっとしました。たぶん、家族も親族も同じ思いだったことでしょう。

結婚式準備は着々と進み、親族代表のスピーチを誰にしてもらうかという話になりました。
両親以外でいちばん身近な人といえば弟ですが、わたしたち姉弟は年が離れていて、弟はまだ未成年だったので、伯父にしてもらうことになりました。

伯父は父の姉の夫ですが、父とは従兄にあたるので、まったくの義理関係ではなく、ふだんから気安いつきあいをしていました。
ただ、この人選にはひとつ不安材料がありました。伯父は陽気でひょうきんで愛すべきキャラ……ぶっちゃけ、少々おバカな人だったからです。

でも、伯父の奥さん、つまり私の実の伯母はしっかり者なので、大丈夫だろうと思っていました。伯母がスピーチの下書きをして、伯父にキビシク叩きこむさまも想像できました。

さて当日。夫となる人の地元にある宗像大社でおごそかに式を上げた後、やはり地元の割烹旅館で披露宴を開きました。
地元の風習とかで、夫の実家のご近所さんまでお祝いに顔を出し、ちょっと古風で風情のある披露宴でした。
そのわりに堅苦しいことはなく、私の職場の仲良しデュエットに私も文金高島田で加わったり、夫の兄弟が隠し芸を披露したり、和やかに宴は進んでいきました。

締めの時間も近づき、いよいよ伯父のスピーチです。いかにもカンペを見ています、というたどたどしさでしたが、それも味……とほほえんでいたとき、とんでもない言葉が飛び出しました。

「えー、さて、○子も『年増』になりましてー」

ざわっと空気がゆれました。伯母は、顔を真っ赤にして怒っていました。

たぶん原稿では、『年頃』となっていたのでしょう。「年増」と「年頃」、たった一文字ですが、この差は大きい。
伯父も本音では、私のことを「嫁き遅れの年増」と思っていたのですね。若ければともかく、実際に年増なので、さすがに笑えませんでした。
今でも親族の集まりで伯父の顔を見ると、むしょうに腹が立ちます。

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