新郎の父の挨拶は、息子へのメッセージ


もう20年以上前のことになりますが、大宮氷川神社で行われた友人の結婚式で新郎のお父さんがした挨拶が、今でも強く記憶に残っています。私の友人が新郎だったのですが、彼のお父さんのスピーチが異例だったのです。

新郎の父親は親族を代表して、招待客にお礼を述べるのが通例です。友人のお父さんも、最初に型どおりのお礼を言ったあと、新郎、つまり自分の息子にこんなメッセージを贈りました。正確ではないと思いますが、再現してみます。

「さて、先ほど、夫婦最初の共同作業として、ケーキ入刀を行いました。共同作業というのは、夫婦が円満でいるために欠かすべからざることです。

そこで、私は息子にすすめたい。週末は自分も台所に立って、恵子さん(仮名)に教わりながら、いっしょに料理を作りなさい。恵子さんの料理上手は、先日わが家で手料理を作ってもらって、よくわかっています。ですから、彼女の生徒になって、料理を覚えてほしいのです。

かくいう私も、結婚して10年ぐらいしてから、妻といっしょに台所に立つようになりました。妻が入院して、やむを得ず料理をするようになったのが、そのきっかけです。

その時に思ったのが、『もっと早く料理をカミさんに教わっておけばよかった』ということです。
ではなぜ、息子にこれまで料理をやらせなかったのか。それは、男はどうしても家庭でイニシアティブを取ろうとする。それが夫婦関係を悪くすることも少なくありません。ですから、なまじ料理を覚えているよりも、まったくできない状態で奥さんから教わったほうが、良い関係を作れると考えたからなのです。

息子はまったく未経験。ですから、恵子さん、どうか小学生の子どもを相手にするつもりで、一から教えてやってください。よろしく頼みます。

夫婦円満の大もとは、二人の健康。そして、健康の大もとは食事です。二人の共同作業で健康を維持して、長くいっしょに人生を歩んでいってください」

大変異例なスピーチでしたが、お父さんが息子とお嫁さんのことを深く考えていることがダイレクトに伝わり、私は感動してしまいました。

ちなみに、友人にあとで聞いたところでは、お父さんから「結婚したら台所に立て」と言われたのはそのときが初めて。つまりお父さんは結婚式まで、そのメッセージを自分の心の中で温めていたのです。
それにもまた、心を動かされました。

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